2026年年金改正!パート主婦とシニアの新常識
「2026年年金ショック」という言葉に、将来への不安を感じていませんか?しかし、この変化は制度の「崩壊」ではなく、私たちの社会が直面する少子高齢化や働き方の多様化に対応するための、計画的な「機能強化」です。
特に大きな影響を受けるのが、扶養内で働くパート主婦と、60歳以降も働き続けるシニア世代です。今回の改正は、これまでの「働き控え」や「働き損」といった問題を解消し、誰もが公平に、そして安心して働ける社会を目指すもの。この記事では、新ルールのポイントを分かりやすく解説し、あなたが今から取るべき行動を具体的にガイドします。
【パート主婦向け】さよなら「年収の壁」、こんにちは「時間の壁」
パート主婦の働き方を長年縛ってきた「106万円の壁」「130万円の壁」。この常識が、まもなく覆されます。
新ルール:重要なのは「年収」より「週20時間」
今後の社会保険加入を左右する最大のポイントは、年収額ではなく「週の所定労働時間が20時間以上か否か」になります。これまで「106万円の壁」として知られた月収8.8万円という賃金要件は、最低賃金の上昇に伴い、今後3年以内に撤廃される方針です。
つまり、「年収を106万円未満に抑える」という調整は過去のものとなり、これからは「週20時間未満で働くか、20時間以上働くか」が、社会保険加入の大きな分かれ道となるのです。
このルールは、企業の規模に応じて段階的に適用が拡大されます。2024年10月からは従業員51人以上の企業が対象となり、その後も段階的に範囲が広がり、2035年には企業の規模に関わらず、週20時間以上働く人は原則として社会保険に加入することになります。
社会保険加入、得する?損する?メリット・デメリット
社会保険への加入は、目先の手取りと将来の安心を天秤にかける決断です。
短期的なデメリット(痛み)
- 手取り額の減少:給与から社会保険料(厚生年金・健康保険)が天引きされるため、手取りは確実に減ります。
- 配偶者手当の喪失:夫の会社の規定によっては、妻が扶養から外れることで家族手当などが受け取れなくなる可能性があります。
長期的なメリット(安心)
- 将来の年金が大幅アップ:国民年金に加えて、収入に応じた厚生年金が上乗せされ、生涯受け取れる年金額が増えます。
- 手厚い医療保障:病気やケガで働けなくなった際の「傷病手当金」や、産休中の「出産手当金」など、万が一の時のセーフティネットが格段に手厚くなります。
- 障害年金の拡充:万が一障害を負った場合も、より手厚い「障害厚生年金」の対象となります。
「働き損」を乗り越える!目指すべき年収は?
社会保険に加入すると、一時的に手取りが減る「手取りの逆転現象」が起こります。例えば、年収105万円なら手取りは約103.5万円ですが、年収106万円になると社会保険料(年間約15万円)が引かれ、手取りは約89万円にまで減ってしまうのです。
しかし、これは一時的な谷。この谷を越えて、例えば年収を125万円程度まで増やすことができれば、手取り額は約104万円となり、社会保険加入前の水準を回復できます。同様に、年収130万円の壁を越える場合は、年収155万円以上を目指すことで、働き損感を解消し、働けば働くほど手取りが増える状態になります。
賢く交渉!働き方を変えるためのアクションプラン
制度変更を前に、主体的に行動しましょう。まずは「週20時間未満で働く」か「週20時間以上働いて収入と保障を最大化するか」方針を決めます。そして、雇用主との建設的な対話が重要です。
労働時間を増やしたい場合は、「制度変更を機に、将来の保障を考えて社会保険に加入したい。年収130万円程度を目指せるよう、シフトを調整いただけないでしょうか」と、前向きな姿勢で相談してみましょう。
逆に時間を減らしたい場合は、「新しいルールに合わせて家計を調整したく、週20時間未満での勤務は可能でしょうか」と、会社の状況を配慮しつつ相談するのが良いでしょう。
交渉の際には、企業が社会保険加入を支援すると国から助成金(キャリアアップ助成金)がもらえる制度があることも伝えると、会社側のメリットも示せて交渉がスムーズに進むかもしれません。
【働くシニア向け】朗報!「働き損」がなくなる新しい62万円の壁
60代以降も意欲的に働くシニアを悩ませてきた「働けば働くほど年金がカットされる」というジレンマ。この「働き損」問題が、ついに解消されます。
新ルール:年金カット基準が50万円から62万円へ
これまでの在職老齢年金制度では、給与と年金の合計月額が50万円を超えると、超過分の半額が年金からカットされていました。これが、働く意欲を削ぐ大きな要因でした。
2026年4月からは、この基準額が一気に62万円に引き上げられます。これは、長年キャリアを積んだ人が現役時代に近い収入を得ながら、年金を満額受け取れるように設計されたもので、経験豊富なシニアの活躍を後押しする大きな追い風となります。
あなたの年金はいくら増える?
この変更で、あなたの手取りはどれくらい増えるのでしょうか。
例えば、月給45万円、年金月額15万円の方の場合、合計は60万円です。
現行ルールでは、基準の50万円を10万円超えるため、その半分の5万円が毎月年金からカットされていました。
しかし新ルールでは、合計額が62万円を下回るため、年金は一切カットされず、満額を受け取れるようになります。つまり、毎月5万円、年間で60万円も手取りが増える計算です。
最強の老後戦略「働きながら繰下げ受給」
今回の改正は、もう一つの強力な制度「年金の繰下げ受給」と組み合わせることで、効果を最大化できます。繰下げ受給とは、年金の受け取り開始を66歳以降に遅らせることで、年金額を増やす制度です。70歳まで繰り下げれば42%、75歳なら84%も生涯にわたって年金額が増えます。
そこで考えられる最強の戦略が、「65歳から70歳までは新しい62万円ルールでしっかり働き、その間は年金を受け取らずに繰下げを選択する」という方法です。
これにより、現在の収入を確保しつつ、将来の年金を大幅に増やすことが可能になります。繰下げ受給の損益分岐点は、一般的に81歳前後とされています。ご自身の健康状態やライフプランと照らし合わせて、検討する価値は十分にあるでしょう。
まとめ:未来は自分で作る!2026年改正を乗りこなすための最終チェック
「2026年年金ショック」は、正しく理解すれば、より良い未来を築くためのチャンスです。漠然とした不安を、具体的な行動計画に変えましょう。
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パートで働く方へ
- 働き方の基準は「年収」から「週20時間」へ変わります。
- 社会保険に加入するなら、手取りの減少を乗り越える年収125万~155万円以上を目標にしましょう。
- 長期的に見れば、社会保険加入は将来の年金増額や手厚い医療保障という大きなメリットがあります。
- 自身の希望を固め、雇用主と前向きに働き方を相談しましょう。
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働くシニアの方へ
- 年金カットの基準額が62万円に引き上げられ、「働き損」が大幅に解消されます。
- 年金カットを気にせず、自身の能力を最大限に活かして働くことが可能になります。
- 「働きながら繰下げ受給」を組み合わせることで、現在と未来の収入を同時に最大化する戦略も検討しましょう。
制度の変更は複雑ですが、その本質は、誰もが安心して働き、暮らせる社会を作るためのものです。正しい知識を武器に、自信をもって新たな一歩を踏み出しましょう。もし判断に迷うことがあれば、年金事務所や社会保険労務士などの専門家に相談することも有効です。
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