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賞与より月給?大手で進む給与体系改革のメリット・デメリット

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目次
なぜ今、「賞与の給与化」なのか?3つの大きな背景 企業側のメリットとデメリット 従業員側のメリットとデメリット まとめ:変化の波を乗りこなすために

「冬のボーナスを廃止し、月給に上乗せ」。2025年からソニーグループが実施するこの報酬制度改革は、大きな注目を集めました。同様の動きはバンダイや大和ハウス工業といった大手企業にも広がっており、「賞与の給与化」は日本の働き方を大きく変える可能性を秘めたトレンドとなっています 。  

これまで当たり前だった年2回の賞与(ボーナス)を、なぜ今、企業は見直しているのでしょうか。この変化は、企業と従業員にそれぞれどのような影響をもたらすのか。本記事では、その背景からメリット・デメリット、そして日本の雇用の未来までを詳しく解説します。

なぜ今、「賞与の給与化」なのか?3つの大きな背景

大手企業が報酬制度にメスを入れる背景には、複合的な要因があります。

1. 熾烈な人材獲得競争
最大の理由は、激化する人材獲得競争です 。特に優秀な若手や専門人材の採用において、求人票に記載される「月給」の額面は、企業の魅力を示す重要な指標となります 。ソニーの人事担当者も「年収総額では競争力があるが、月給だけを見ると一部の競合に見劣りしてしまう」と認めるように、従来の賞与比率が高い給与体系では、月給が低く見えがちでした 。賞与を給与に組み込むことで月給を高く見せ、採用市場での競争力を直接的に高める狙いがあります 。  

2. 物価高騰と安定志向の高まり
続く物価高は、従業員の生活に大きな影響を与えています 。企業の業績によって変動する賞与よりも、毎月の生活費や住宅ローン、教育費の支払いに充てやすい、安定的で予測可能な月収を重視する従業員が増えています 。企業側も、従業員の経済的な不安を和らげ、安心して働ける環境を提供することが、人材の定着(リテンション)につながると考えています 。  

3. 「ジョブ型雇用」への移行
年功序列を前提とした「メンバーシップ型」から、職務の役割と成果に基づいて報酬を決める「ジョブ型」雇用へ移行する流れも、この動きを後押ししています 。日本の伝統的な賞与は、勤続年数や集団交渉の結果として一律に決まる側面があり、個人の役割や成果との連動性が弱いという課題がありました 。賞与を廃止・縮小し、個人の役割(ジョブグレード)に紐づく月給の比重を高めることで、より透明性の高い成果主義を実現しようとしているのです 。  

企業側のメリットとデメリット

報酬制度の変更は、企業にとって大きな決断です。そこには戦略的なメリットと、覚悟すべきデメリットが存在します。

【メリット】

  • 採用力の強化と定着促進: 前述の通り、高い月給は採用市場で強力なアピールポイントになります 。また、安定した収入は従業員の生活基盤を支え、エンゲージメントや定着率の向上に繋がります 。
  • キャッシュフローの平準化と管理業務の効率化: 年2回の巨額な賞与支払いがなくなることで、月々のキャッシュフローが安定し、財務計画が立てやすくなります 。また、複雑な賞与計算の業務負担が軽減されるという管理上のメリットもあります 。
  • 社会保険料の最適化(一部高所得者層において): 厚生年金保険料の算定基礎には上限額が設けられています 。そのため、報酬が上限を超えるような高所得の専門人材に対しては、賞与を給与に移行させることで、企業の社会保険料負担を抑えつつ、従業員の手取り額を増やす効果が期待できる場合があります 。

【デメリット】

  • 固定人件費の増加と財務的柔軟性の喪失: 最大のデメリットは、固定費である月給が増加することです 。賞与は、業績が悪化した際に人件費を調整する「緩衝材」の役割を果たしてきましたが、その柔軟性が失われます 。業績不振時に経営を圧迫するリスクが高まります。
  • 残業代や退職金など付随コストの増加: 残業代は月給を基準に計算されるため、月給が上がれば残業単価も上昇します 。また、退職金が基本給に連動している場合、将来的な負債が増加する可能性も考慮しなければなりません 。
  • モチベーション維持の難しさ: 「ボーナス」という大きな目標がなくなることで、仕事のメリハリが失われたり、会社の業績への関心が薄れたりする懸念があります 。卓越した成果に対するインセンティブとして、新たな仕組みを設計する必要が出てくるかもしれません 。

従業員側のメリットとデメリット

働く私たちにとって、この変化は日々の生活に直結します。

【メリット】

  • 収入の安定と生活設計の容易化: 最も大きなメリットは、毎月の収入が安定し、予測可能になることです 。これにより、住宅ローンや子どもの教育費など、計画的な支出管理がしやすくなります。物価高の中でも、経済的な安心感を得やすいと言えるでしょう 。
  • 転職のタイミングが自由に: 賞与は「黄金の手錠」とも言われ、支給時期まで退職をためらわせる一因でした。月給が高ければ、賞与を気にせず、年間を通じてキャリアの選択肢を検討しやすくなり、労働市場の流動性が高まります 。

【デメリット】

  • 「まとまったお金」がなくなる: これまで賞与で賄っていた車の購入や住宅の頭金、海外旅行といった大きな支出の計画が立てにくくなります 。ボーナス払いを設定している場合は、家計の見直しが必須です。
  • 計画的な貯蓄がより重要に: 企業が賞与という形で半ば強制的に行ってくれていた「一時金の形成」を、自分自身で行う必要があります 。毎月の給与から計画的に貯蓄する自己管理能力が、これまで以上に求められます。
  • 成果に対する実感の希薄化: 会社の成功が大きな賞与として還元されるという「お祭り感」や、個人の頑張りが賞与額に反映される実感が薄れる可能性があります 。これがモチベーションに影響を与える人もいるかもしれません。

まとめ:変化の波を乗りこなすために

ソニーなどの大手企業から始まった「賞여の給与化」は、単なる給与の支払い方法の変更ではありません。それは、人材獲得競争の激化、物価高、そしてジョブ型雇用への移行という時代の要請に応えるための、戦略的な人事制度改革です。

この動きは、企業には財務的な柔軟性と引き換えに採用競争力を、従業員にはまとまった収入と引き換えに月々の安定をもたらすという、トレードオフの関係にあります。このトレンドは今後、追随する企業が増える一方で、財務的な体力から伝統的な賞与制度を維持する企業も多く、労働市場の二極化が進む可能性も指摘されています 。  

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