飲み会不要論と世代間ギャップ:新しいチームの作り方
「飲み会、どう思う?」――この一言が、職場で世代間の大きなギャップを浮き彫りにすることがあります。若手社員からは「正直、気が進まない」「プライベートな時間を大切にしたい」といった声が聞かれる一方、ベテラン社員の中には「仕事後の付き合いもチームワークには必要だ」と考える人も少なくありません。
かつては親睦を深める手段として当たり前だった職場の飲み会。しかし、働き方や価値観が多様化する現代において、そのあり方が問われています。本記事では、この「飲み会」をめぐる世代間の意識差の背景を探り、それが職場にどんな影響を与えているのか、そして、飲み会に代わる新しいチームビルディングの形について考えていきます。
若者はなぜ「ノー」?ベテランはなぜ「イエス」?飲み会への世代間ギャップ
なぜ、飲み会に対する考え方は世代によってこんなにも違うのでしょうか。それぞれの本音と、その背景にある価値観を見ていきましょう。
若手が飲み会を敬遠するワケ
多くの若手社員が職場の飲み会に消極的なのには、いくつかの理由があります。
まず、時間的・金銭的コストへの意識です。飲み会は、貴重なプライベートな時間とお金を投資するものと捉えられ、その見返りが明確でないと感じる若者が増えています 。参加費が高額な場合もあり、経済的な負担を感じることも少なくありません 。
次に、ワークライフバランスとプライベート時間の重視。仕事と私生活をはっきり分けたいという価値観が広がり、業務時間外の飲み会を「労働時間の延長」と感じ、プライベートな時間が侵害されると考える傾向があります 。
また、ハラスメントへの懸念も大きな要因です。上司や先輩からのアルコールの強要や、酔った勢いでの説教などは、パワーハラスメントやアルコールハラスメントとして認識され、強いストレス源となります 。上司がいる場では気を遣い、リラックスできないと感じる人も多いようです 。
さらに、コミュニケーション手段の多様化も影響しています。SNSやチャットツールなど、アルコールを介さなくても気軽にコミュニケーションを取れる手段が増えたため、必ずしも飲み会が必要だとは感じていないのです 。
ベテランが「飲みニケーション」に期待すること
一方、ベテラン社員の中には、依然として「飲みニケーション」の重要性を感じる人が少なくありません。その背景には、長年の経験から培われた以下のような期待があります。
コミュニケーションの円滑化を期待する声は大きいです。アルコールが入ることで、普段のオフィスでは言いづらい本音や率直な意見が出やすくなり、心理的な壁が低くなると考えられています 。
また、チームビルディングと信頼関係の構築も重要な目的です。仕事以外の場で共に過ごし、互いの異なる一面を知ることで相互理解が深まり、それがチームワークの向上に繋がるとの経験則があるのです 。
情報共有やアイデア創出の機会としても捉えられています。リラックスした雰囲気での会話は、思わぬ情報交換や新しいアイデアのヒントを生むことがあると期待されています 。
さらに、ストレス解消やモチベーション向上の効果も期待されます。日々の仕事の悩みを共有したり、成功を祝ったりすることで、精神的な負担が軽減されると感じる人もいます 。お酒の場が好きな30代男性は、職場での自己有用感が高い傾向があるという調査結果もあります 。
その溝、放置して大丈夫?チームへの影響
飲み会に対する世代間の認識のズレは、単なる好みの問題では済まされません。放置しておくと、チームのコミュニケーションや人間関係、さらには組織全体の生産性にも悪影響を及ぼす可能性があります。
すれ違いが生むコミュニケーション不全
伝統的に飲み会がインフォーマルなコミュニケーションの場として機能してきた職場では、その機会が減ることで、世代間の情報共有や暗黙知の伝承が滞る可能性があります 。ベテラン社員が持つ経験や知識が若手に伝わりにくくなったり、逆に若手の新しい視点がベテランに届きにくくなったりするのです。
また、コミュニケーションスタイルの違いから誤解が生じやすくなることもあります 。例えば、Z世代はまず関係性を築いてから社交的な場に参加したいと考える傾向があるため 、ベテランが期待する「飲み会でのアイスブレイク」が機能しにくいことも考えられます。
「不参加」が招く誤解と偏見
飲み会への不参加が、一部のベテラン社員から「協調性がない」「とっつきにくい」といったネガティブな印象を持たれることがあります 。これは、飲み会が長年、チームの一体感を醸成する場として機能してきた歴史的背景があるためです 。
このようなネガティブな評価は、不参加者に対する無意識の偏見を生み出し、インフォーマルなネットワークからの排除や、メンターシップの機会損失に繋がる可能性も否定できません。逆に、参加を強要するベテラン社員に対して、若手社員が反感を抱くこともあり、相互不信を助長しかねません 。
チームの士気と生産性への影
世代間の誤解やネガティブな認識が続くと、チーム全体の士気や心理的安全性が低下しやすくなります 。一部のメンバーが疎外感を感じている状態では、オープンな協力体制を築くことは困難です。
インフォーマルなコミュニケーションが減ることで、非公式な知識共有の機会が失われ、問題解決の遅延やイノベーションの停滞を招く可能性も指摘されています 。最終的には、チーム全体の生産性低下や、特に若手社員の離職率増加といった深刻な問題につながる恐れがあります 。
飲み会だけじゃない!イマドキのチームビルディング術
では、飲み会に代わる、あるいはそれを補完する新しいチームビルディングにはどのようなものがあるのでしょうか。大切なのは、多様な価値観に対応できる選択肢を持つことです。
オフィスで気軽に!ランチ会からスキルシェアまで
日常業務の延長線上で気軽に参加できるオフィス内活動は、世代間のコミュニケーションを自然に促します。
- ランチミーティング・コーヒーブレイク: 食事やコーヒーを共にしながら、業務の相談をしたり、雑談をしたりする時間です 。キャリアインデックス社の「ランダムランチ会」やバンダイナムコエンターテインメント社の「バンナム誕生会」のような、会社が主導するランチ会や誕生日会も良い例です 。
- スキル共有ワークショップ: 社員が講師となり、業務スキルや趣味の知識を共有する勉強会です 。ベテランが経験を、若手が新しい技術を教え合う「リバースメンタリング」も効果的です 。
- ウォーキングミーティング: 歩きながら会議を行うことで、リラックスした雰囲気で意見交換ができます 。
一緒に汗を流し、体験を共有!アクティビティ型
共通の体験を通じて協力し合う活動は、世代を超えた絆を育むのに非常に有効です。
- 協力型ゲーム・スポーツ: 謎解き脱出ゲームやビジネスゲーム、チャンバラ合戦、ARスポーツなど、チームで協力して課題に取り組むものは一体感を高めます 。社内運動会や駅伝大会も、部署を超えた交流のきっかけになります 。
- 屋外レクリエーション: バーベキューやキャンプ、料理イベントなどは、リラックスした雰囲気で自然な会話が生まれます 。
- ボランティア活動: チームで地域貢献活動に参加することで、仕事とは異なる共通の目的意識を持つことができます 。
- 社内サークル活動: スポーツや文化系のサークル活動は、共通の趣味を通じて自然なつながりを育みます 。バスクリン社の「銭湯部」のように、世代を超えた交流が生まれる例もあります 。
オンラインでも繋がれる!デジタル活用術
リモートワークやハイブリッドワークが広がる現代では、オンラインでのチームビルディングも重要です。
- オンライン懇親イベント・ゲーム: オンライン飲み会はもちろん、バーチャル謎解きゲームやオンラインクイズ大会など、楽しみながら交流できる企画が増えています 。
- バーチャル趣味コミュニティ: Slackなどのチャットツール上に、共通の趣味について語り合えるチャンネルを作るのも良いでしょう 。
新しいカタチを成功させるには?
新しいチームビルディングを導入する際には、いくつかの重要なポイントがあります。
カギはリーダーシップと「心理的安全性」
まず、リーダー自身が新しい取り組みに積極的に参加し、その価値を示すことが大切です 。そして何より重要なのが「心理的安全性」の確保です。心理的安全性とは、チームの誰もが安心して自分の意見を言えたり、助けを求めたりできる状態のこと 。これがなければ、どんな活動も表面的なものに終わってしまいます。リーダーは、メンバーの発言を尊重し、失敗を恐れずに挑戦できる雰囲気を作ることが求められます 。
みんなが楽しい!多様な選択肢と目的の明確化
活動を企画する際には、一部の人だけでなく、できるだけ多くの人が楽しめるように、多様な選択肢を用意することが重要です 。また、何のためにその活動を行うのか、目的を明確に伝えることも大切です 。特にZ世代は、活動の意義やメリットを重視する傾向があります 。
おわりに:世代を超えた理解で、もっと強いチームへ
飲み会に対する考え方の違いは、単なる世代間の嗜好の違いではなく、働き方や価値観の多様化を反映したものです。大切なのは、一方的にどちらかの価値観を押し付けるのではなく、お互いの考えを理解し、尊重し合うこと。そして、飲み会に固執せず、多様なチームビルディングの手法を取り入れ、全てのメンバーが心地よく参加できる方法を模索していくことです。
世代間のギャップを乗り越え、それぞれの強みを活かせるチームは、変化の激しい現代において大きな力となるはずです。オープンな対話と新しい挑戦を通じて、より強く、より創造的なチームを築いていきましょう。
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