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Z世代の心を掴む「背徳感」の正体とは?夜のラーメン、内緒の副業に共感するワケ

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目次
「背徳感」は「罪悪感」とどう違う?矛盾した感情の正体 頑張る自分へのご褒美:「背徳グルメ」の心理 罪悪感をなくす「ギルトフリー」という新たな選択肢 会社に隠れて副業?見えない規範を破る「パラレルキャリア」 SNSと「ごめんね消費」:完璧を捨てて共感を求める まとめ:Z世代の「背徳感」は矛盾を生きる自己決定の証

深夜に食べるラーメン、仕事中にこっそり行う副業、環境に配慮しつつも安価な服を買ってしまう「ごめんね消費」。Z世代の若者たちの間で「背徳感」というキーワードが大きな共感を呼んでいます。この流行は単なるブームではなく、デジタルネイティブである彼らの複雑な内面と、現代社会の矛盾を映し出す鏡だと言えるでしょう。

Z世代は、健康やサステナビリティ、自己実現といった規範的な価値観を重視する一方 、現実とのギャップに日々葛藤しています。本記事では、この「背徳感」というキーワードを単なる「うしろめたさ」ではなく、Z世代特有の心理的メカニズムとして紐解いていきます。  

「背徳感」は「罪悪感」とどう違う?矛盾した感情の正体

辞書を引くと「背徳」とは「道徳にそむくこと」とあり、背徳感は「うしろめたさや罪悪感を伴う感情」と定義されています 。しかし、Z世代が使う「背徳感」は、この一般的な意味合いとは少し異なります。彼らはこの感情を「たまらない」「ヤバい」といったポジティブな言葉で表現することがあり、そこには「快感」と「苦痛」が共存しているのが特徴です 。  

一方で「罪悪感」は、悪いことだと思っていなかった行動を後から後悔する、苦痛が中心となる感情です 。例えば、不注意で人を傷つけてしまった時などがこれにあたります。これに対し「背徳感」は、  

良くないと分かっていながら、あえてその行動を取ったときに生じる後悔です 。  

この「快感と苦痛の両立」は、心理学の「カリギュラ効果」によって説明できます。人間は「するな」「見るな」と禁止されると、かえって興味を惹かれるという心理現象です 。これは、自由を制限されることへの反発心や、未知のものへの好奇心から生まれます 。神話の「禁断の果実」も、この人間の本質を古くから示しています 。  

Z世代が「背徳感」に惹かれるのは、彼らが「完璧主義」に疲弊し 、旧世代の規範への反発を抱いていることと関連しています 。社会のルールや期待に縛られるストレスが高まる中で、禁止を破ることは一種のカタルシス(心の浄化)となり得るのです 。  

頑張る自分へのご褒美:「背徳グルメ」の心理

Z世代は、SNSや動画を通して栄養学の知識を持ち 、健康や美容に良いバランスの取れた食事を好みます 。タイムパフォーマンス(タイパ)を重視する彼らの間で、手軽に栄養を摂取できる完全栄養食が定着していることからも、その健康志向の高さが伺えます 。  

しかし、その一方で、「背徳グルメ」と呼ばれる爆盛りやハイカロリーな食事が爆発的に流行しています。この現象は、健康志向という「規範」を意識しているからこそ、それを「あえて破る」ことに価値を見出す、Z世代特有の「選択的な背徳感」の文化だと言えるでしょう 。  

「背徳グルメ」を食べたくなるのは、ストレスが溜まった時や疲れている時が多く、日々の我慢やプレッシャーから解放される「自分へのご褒美」としての役割を果たしています 。マヌルパンや痛風鍋、ルーサーバーガーなどは、見た目のインパクトも強く、SNS映えするため拡散性も高いです 。企業はメニューに「背徳」という言葉を入れることで、この心理を巧みに捉え、SNS投稿を促し集客効果を上げています 。  

罪悪感をなくす「ギルトフリー」という新たな選択肢

「食べたいけれど太るのが怖い」「カロリーや脂質が気になる」といった食事への罪悪感 に対し、その感情を解消するためのもう一つのトレンドが「ギルトフリー」(罪悪感のない)です 。これは「我慢する」のではなく、「身体に良いものを選択する」という逆転の発想であり 、大豆ミートや低カロリーなスイーツなどが人気を集めています 。  

「背徳グルメ」と「ギルトフリー」は相反するトレンドに見えますが、実は同じ心理(食事への罪悪感)の表裏一体です。前者は規範を「破る」ことで快感を得るのに対し、後者は規範に「寄り添う」ことで罪悪感を解消します 。夜食のカップ麺のCMが、夜中にラーメンを食べたいという衝動と「バレるかもしれないドキドキ感」という背徳感を巧みに描いて共感を集めたように 、企業はこの両極の心理に合わせたマーケティングを展開しています。  

会社に隠れて副業?見えない規範を破る「パラレルキャリア」

Z世代は、バブル崩壊後の厳しい経済状況で育ったゆとり世代よりもさらに多様性を重視し、自由な働き方を求める傾向があります 。彼らは仕事に「自己実現」や「成長」を求め 、「ワークライフバランス」を何よりも重視します 。  

この価値観は、従来の終身雇用や会社への忠誠を重んじてきた旧世代の仕事観とは大きく異なります 。多くの企業が副業を禁止している現実がある中 、副業を含む「パラレルキャリア」はZ世代にとって自然な選択肢であり 、会社に内緒で行う場合には一種の背徳的な行動となります 。  

この背徳感の正体は、従来の「会社への忠誠」という価値観と、「自分の人生は自分で決める」という新しい価値観との間で揺れ動く、本質的な葛藤の表れです 。彼らは、会社に尽くす自分と、自己実現を追求する自分、両方でありたいという矛盾を抱えています。副業によって本業がおろそかになるのではという不安や、周囲に理解されないかもしれないという懸念も、この葛藤を複雑なものにしています 。  

それでも彼らが挑戦を続けるのは、「自分の未来は自分の行動によって変わる」という成長思考(Growth Mindset)を持っているからです 。失敗を恐れる傾向があるZ世代にとって 、副業が会社にバレるというリスクを乗り越え、行動に移すことは、自らの生き方を主体的に選択する「自己決定」の証と言えるでしょう 。  

SNSと「ごめんね消費」:完璧を捨てて共感を求める

SNSが日常に浸透したZ世代は、他者からの評価を気にしつつも、承認欲求が高いと思われたくないという矛盾を抱えています 。また、従来のSNSにみられる完璧な自分を演じる「映え」文化に「わざとらしさ」や「信用できない」と反発を感じるようになっています 。  

その反動として、彼らは「本物らしさ」や「飾らない姿」、さらには「感情的な脆弱性」を共有することに価値を見出しています 。無加工・無編集のリアルな日常を共有するSNSアプリ「BeReal.」は、過度な承認欲求や競争から解放される場として、Z世代に支持されています 。  

この「本物らしさ」への希求は、消費行動にも現れています。Z世代はSDGsや環境問題への関心が高いにもかかわらず 、安価でデザインが豊富な「ウルトラファストファッション」の誘惑に抗えず購入してしまう現実があります 。  

この「環境に悪いと知りながらも買ってしまう」行動に対し、彼らは「ごめんね」という罪悪感を抱き、これを「ごめんね消費」と呼んでいます 。これは、理想の自分(環境に配慮する消費者)と現実の自分(安くておしゃれなものが欲しい消費者)の間の矛盾を、SNSという公開の場で自己開示することで、共感を得るための戦略的な自己表現です 。  

まとめ:Z世代の「背徳感」は矛盾を生きる自己決定の証

Z世代の「背徳感」は、単なる衝動や快楽の追求ではありません。それは、理想の自分と現実の自分との間で揺れ動き、葛藤する彼らのリアルな姿を象徴するものです 。

この感情は、旧来の規範や他者の期待から脱却し、自分自身の価値観に基づいて生き方を「自己決定」しようとするZ世代の新しい時代の生き方そのものです。完璧を装うのではなく、不完全な自分や矛盾を抱えた自分を受け入れ、それを公にすることで、同じような葛藤を抱える仲間との共感と連帯感を築いているのです 。  

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社会の闇に潜む心理や現象を紐解き、hikidashiで発信しています。SNS、ハラスメント、陰謀論、占いなど、現代社会が抱える複雑な問題に独自の視点で切り込み、読者の皆様と共に考える場を提供できれば幸いです。
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