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忘年会スルーはアリ?任意参加の建前と本音

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片桐配慮
目次
「忘年会スルー」の背景と2024年の逆説 「会社の飲み会は任意参加」という建前 なぜ「任意」なのに「強制」なのか Z世代の言い分: 非合理な「飲みにケーション」 合理主義者たちのコスト分析 意外な真実: Z世代は「参加意欲が最も高い」 管理職の言い分: 善意が裏目に出る悲劇 「社員を労いたい」という善意 経営陣と社員の深刻な「認識のズレ」 賢い立ち回り方(1)従業員(Z世代)編 角を立てない「スルー」の技術 「戦略的参加」のススメ 賢い立ち回り方(2)管理職編 「目的」と「手段」を分離する デキる上司の「対話術」 「宴会部長」から「ファシリテーター」へ 結論: 「飲みにケーション」から「戦略的コミュニケーション」へ

「忘年会スルー」の背景と2024年の逆説

「忘年会スルー」という言葉が、組織文化の転換点を象徴しています。これは、半ば強制的な雰囲気のある会社の忘年会を、意識的に欠席する行為を指します。

この傾向はパンデミックによって決定的に加速されました。「忘年会がなくても業務は遂行できる」という事実を多くの人が経験したのです。

しかし、2024年の状況には大きな「逆説」が存在します。

第一に、忘年会の「開催率の完全復活」です。ある調査では、職場の忘年会開催予定率は73.6%に達し、これはコロナ禍前(2019年の61.4%)すら上回る数値です。

第二に、従業員の「参加意欲の歴史的低下」です。開催率が過去最高にもかかわらず、従業員の$64.1%$がコロナ禍を経て「参加意欲が低下した」と回答しています。

なぜ、意欲が低いのに開催率は上がっているのでしょうか。背景には、リモートワークの普及によって「コミュニケーションの希薄化」や「組織への帰属意識の低下」を本気で憂慮する経営・管理職層の姿があります。彼らにとって、この課題を解決する最も馴染み深い手段が「飲み会(忘年会)」であり、失われた繋がりを取り戻そうとする「過剰補正」が起きている可能性が高いのです。

「会社の飲み会は任意参加」という建前

なぜ「任意」なのに「強制」なのか

データ上、忘年会を「原則として強制参加」とする企業は少数派で、大半は「任意参加」を建前としています。

しかし、従業員が感じる現実は異なります。「周りに合わせるために、本当は行きたくない飲み会に行った経験がある」と答える従業員は$75%$に上ります。「上司の目が気になる」「欠席すると評価に響くのでは」という不安が、「断れない空気」という事実上の強制力を生み出しているのです。

企業が「任意」にこだわる本当の理由

企業が「任意参加」という言葉にこだわるのは、単なる配慮だけではありません。これは、法的・労務リスクを回避するための「防衛線」です。

もし忘年会を「強制参加」と認定すれば、それは「業務」とみなされます。労働時間外に行われることの多い忘年会が「業務」となれば、企業は残業代の支払い義務を負います。

また、上司の立場を利用して参加を強要する行為は、パワーハラスメント(パワハラ)に該当する可能性も出てきます。

つまり、「任意参加」という建前は、企業にとっては残業代請求やハラスメント訴訟を回避する法的な盾(リーガル・シールド)です。しかし従業員にとっては、「権利(欠席)を行使して和を乱すか、期待(出席)に応えて協調性を示すか」という、社会的な踏み絵になってしまっているのです。

Z世代の言い分: 非合理な「飲みにケーション」

合理主義者たちのコスト分析

「Z世代の飲み会」離れは、感情的な反発ではなく、合理的なコスト分析に基づいています。

  • 時間の非効率性: 「飲み会よりプライベートの時間がほしい」(一般社員の81.1%)
  • 精神的負担: 「気を遣うのがしんどい」(55.2%)
  • 金銭的負担: 忘年会費用の約45.4%が「全額参加者負担」という実態。

彼らはコミュニケーション自体を否定しているわけではありません。友人同士で語る「チル飲み」や、ストレス発散の「アゲ飲み」を使い分けるなど、TPOをわきまえています。彼らにとって旧来の会社の飲み会は、「メリットが不明確」な一方で、「ハラスメントに巻き込まれる」リスクが極めて高い、非効率なイベントなのです。

意外な真実: Z世代は「参加意欲が最も高い」

しかし、「忘年会スルー」の象徴とされがちなZ世代ですが、データは逆の事実を示します。「忘年会に参加したい」と回答した割合が最も高かったのは、意外にも20代(68.8%)でした。

なぜでしょうか。これは、彼らの多くがキャリアのスタートをパンデミック下のリモートワークで迎えたことと無関係ではありません。同期や先輩との対面コミュニケーションが絶対的に不足しているのです。

つまり、20代(Z世代)は、アルコールや旧来の飲みにケーションを求めているのではなく、不足している「対面でのコミュニケーション機会」と、キャリア形成に必要な「組織内の人脈構築」を切実に求めているのです。彼らは「忘年会」を、組織から提供される(現時点では唯一の)その機会として、期待を込めて見ているに過ぎません。

管理職の言い分: 善意が裏目に出る悲劇

「社員を労いたい」という善意

対する経営・管理職層の開催動機は、多くが「善意」に基づいています。社長が忘年会を開催したい理由は「社員を労いたいから」(72.1%)が圧倒的トップ。企業側も「従業員の親睦を図るため」(82.0%)と、組織エンゲージメント向上を純粋に目指しています。

経営陣と社員の深刻な「認識のズレ」

問題は、この「善意」が従業員に全く異なる形で受け取られている「認識の非対称性」です。

  • 価値のズレ: 社長の8割以上が飲み会を「ムダではない」と考える一方、社員の半数以上が「ムダだ」と回答しています。
  • 「労い」のズレ: 経営層は「イベント」で労いたいと考えますが、社員の約9割は「忘年会よりボーナス(現金)」で労われたいと回答しています。
  • 結果のズレ: 最も深刻なのは、「士気向上」を意図したにもかかわらず、社員の26.5%が、飲み会での社長の言動(悪酔い、説教、自慢話)によって「社長の印象が悪くなった」と回答している点です。

「労い」のための投資が、むしろ「組織エンゲージメントの毀損」というマイナスのリターンを生んでいる可能性があります。

賢い立ち回り方(1)従業員(Z世代)編

角を立てない「スルー」の技術

会社の飲み会 任意参加である以上、欠席は正当な権利です。しかし、人間関係への影響を最小限に抑える「賢さ」も必要です。

  • 感謝と遺憾の意を表明する: 「お誘いいただきありがとうございます。大変恐縮ですが…」と、まず感謝を伝えます。
  • 明確だが介入しにくい理由を提示する: 「体調不良」や「(変更不可能な)家族との先約」など、他者が介入しにくい理由が有効です。
  • 代替案を提示する: 「今回は残念ですが、ぜひランチで話を聞かせてください」と提案します。これにより、「会(や上司)を避けている」のではなく、「日程が合わないだけ」というポジティブな印象を維持できます。

「戦略的参加」のススメ

一方で、忘年会スルー一辺倒では、キャリア上の「機会損失」に繋がる可能性も否定できません。旧来の飲みにケーションにも、無視できないメリットが存在します。

  • 情報の宝庫: 会議室では聞けない「生きた情報」(他部署の裏話、業界トレンド)にアクセスできます。
  • 人脈形成: 上司やキーパーソンの「人間的な側面」に触れ、信頼関係を築くことで、後の業務がスムーズになる場合があります。
  • 世代間理解: 上司世代の価値観を「理解しよう」と努める姿勢が、キャリアの追い風になることもあります。

参加すると決めたら、「何か一つ情報を得る」など目的意識を持ちましょう。無理に盛り上げる必要はなく、「聞き役」に徹し、一次会で「参加した事実」を残してスマートに早めに退席するのも一つの戦略です。

賢い立ち回り方(2)管理職編

「目的」と「手段」を分離する

管理職の目的が「親睦」や「労い」であるならば、その「手段」が「アルコールを伴う夜の忘年会」である必要はどこにもありません。この分離から始めるべきです。

デキる上司の「対話術」

部下から「飲み会、行かなきゃダメですか?」と問われた時、その対応が信頼を左右します。

  • NGな対応: 「付き合いが悪い」「そういうところを上司は見ている」と感情的に叱責する。
  • OKな対応:
    • 共感する: 「(飲み会が)本質的ではない」と、部下の気持ちをまず肯定する。
    • 事実を提示する: 「しかし、飲み会で話したことがあると、不思議と仕事がしやすくなるという事実もある」と、フラットにメリットを提示する。
    • 選択を尊重する: 「どうするかは君が決めればいい」と、最終的な選択は本人に委ねる。

「宴会部長」から「ファシリテーター」へ

リモートワークが常態化した現代において、管理職に求められるのは「宴会部長」としてのスキルではありません。オンライン会議で全員に発言を促す「ファシリテーション能力」や、チャットツールで意図的に雑談を設計する能力です。

もし忘年会を開催する場合でも、幹事の努力に任せるのではなく、「参加強制禁止」「アルハラ厳重注意」「ソフトドリンクの充実」を全社ルールとして徹底し、安全な場を設計する責任が管理職にはあります。

結論: 「飲みにケーション」から「戦略的コミュニケーション」へ

「忘年会スルー」問題の核心は、組織の多様化と働き方の変化に対し、「忘年会」という画一的な手段が対応できなくなったという、組織の「適応不全」のシグナルです。

今、組織に求められるのは、忘年会が果たしてきた「労い」「親睦」「情報交換」といった機能を「アンバンドル(分離)」することです。

  • 「労い」の機能: 社員の9割が望む「ボーナス(現金)」や、正当な人事評価で行う。
  • 「親睦・一体感」の機能: ハラスメント・リスクのない、別の「賢い」手段で実行する。

忘年会の「代替案」ポートフォリオ

「賢い」組織は、目的に応じて多様な施策を持っています。

  • 「シャッフルランチ」制度:既存の休憩時間を活用するため、プライベートの時間を犠牲にしません。アルコールを伴わず、部署間の壁を取り払うのに最適です。
  • オンライン・チームビルディング:リモートワーカーを巻き込むために不可欠です。オンラインクイズ大会やバーチャル脱出ゲームなど、アルコールを介さない「協働体験」がチームビルディングを促します。
  • 目的志向のオフサイト・イベント:キャンプやスポーツ、あるいは「部署交換(他部署の業務体験)」など、飲み会以外の「共通体験」を通じて、業務に必要な相互理解を深めます。

「忘年会スルー」は、単なる世代間対立ではありません。経営者・管理職は、「なぜ参加しないのか」と嘆くのではなく、「なぜ我々は、社員の6割以上が参加意欲を失うイベントに、未だ固執しているのか」を自問すべき時が来ています。

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片桐配慮
世の中の気になるトピックについて、hikidashiで深く考察しています。社会現象、経済動向、テクノロジー、人間心理など、幅広いテーマを独自の視点で分析し、読者の皆様に新たな発見や思考のきっかけを提供できれば幸いです。ぜひ、コメントや感想をお聞かせください。
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