管理職が“壊れてる”のに気づかない会社は、採用しても続かない
上司の背中を見た若手が、そっと辞めていく
「やる気のある若手を採用したのに、すぐに辞められてしまった」
「新卒が1年持たなかった。何が悪かったんだろう」
そんな声、最近ますます増えていませんか?
もちろん、いまどきの若手の価値観や働き方の変化もあります。
でも、実はもっと根深いところに、離職の原因が潜んでいることがあります。
それは──
“管理職が疲弊している”という事実に、会社が気づいていないこと。
最近の調査では、約6割の管理職が「業務量が増えた」と感じているそうです。
プレイングマネージャーとして数字を追いながら、部下の育成や面談もこなす。
社長からは「人材育成が大事だ」と言われ、部下からは「もっと関わってほしい」と言われる。
その一方で、ミスもトラブルも“責任は管理職が取る”。
……正直、潰れます。
そして、部下はそういう上司の背中を見て、こう思うんです。
「ああ、自分もいずれ、こうなるのか」
そんな未来に、希望を感じられるでしょうか?
管理職が余裕を失った瞬間、チームの“空気”が変わる
部下が辞めていくとき、その原因を「本人の忍耐力不足」や「最近の若者気質」で片付けていませんか?
でも実際には、辞める理由の多くが“職場の空気”です。
その空気をつくっているのは、チームリーダーや管理職の「心の状態」なんです。
たとえば、こんな状態が続いているとします。
・上司の表情に余裕がない
・声をかけても、なんだか急いでいて落ち着きがない
・ミーティングでは常に時間が足りず、部下の話を最後まで聞けていない
・トラブルが起きると、つい語気が強くなる
部下はこうした小さなサインを敏感に察知します。
そして心のなかで、こうつぶやくんです。
「こんな状態の上司に相談しても、余計に負担をかけるだけかもしれない」
「この人が管理職なら、成長してもあまりいい未来がないな」
「このチーム、なんだか“疲れてる”」
怖いのは、これらが全部“言葉にされない”ということ。
誰も何も言わず、ある日突然「辞めたいと思ってます」とだけ告げられる。
この繰り返しが、中小企業の“静かな崩壊”の正体です。
本当にあった、管理職の“限界サイン”が招いた早期離職
あるサービス業の企業で実際にあった話です。
新卒で入った若手のBさんは、入社直後から前向きで、成長意欲の高い社員でした。
毎日のように先輩に質問し、メモを取り、改善提案までしてくれていた。
そんな姿を見て、社長も「久々の当たり人材だ」と期待していたそうです。
でも、配属からたった4ヶ月で退職。
理由を聞くと、意外な答えが返ってきました。
「直属の上司が、いつもイライラしていて…怖かったわけじゃないんです。
でも、“聞いちゃいけない空気”みたいなものがあって。
この会社で先輩になっても、ああなるのかって思ったら、未来が見えなくなりました」
上司である課長は、いわゆるプレイングマネージャー。
部下のフォローに時間を割く余裕はなく、本人もギリギリで仕事を回していた。
誰も悪くない。
でも、誰も「助けて」と言えなかった。
このケース、実はかなり多いんです。
採用の前に、“余白”のある職場をつくろう
人材確保に悩む中小企業が増えるなかで、優秀な人を採ることに注力するのは当然です。
でも、その人が「続くかどうか」は、まったく別の話。
最近の若手は、空気を読みます。
そして、「この人についていきたいか?」を、無言のうちに判断しています。
だからこそ、管理職の“状態”を整えることが、最強の採用戦略になるんです。
では、何から始めるべきか?
派手な制度改革より、まずは“余白”をつくることから始めましょう。
・プレイングマネージャーに、週1でも「マネジメントだけの日」をつくる
・業務の棚卸しをして、「やらなくてもいい仕事」を明確にする
・社内の他部署に「育成サポート」のサブリーダーを配置する
・上司が1日30分だけでも「部下と話す余裕」を持てる仕組みを入れる
どれもすぐに100点の成果を出せるわけじゃありません。
でも、たった30分の“余裕”があるだけで、上司の表情は変わります。
その変化を、若手はちゃんと見ています。
忙しい上司がつくるのは、未来ではなく“退職届”
今の時代、「上司=怖い人」ではもう通用しません。
求められているのは、「相談できる人」「共感してくれる人」「一緒に成長してくれる人」。
でも、それは“時間と心の余裕”がなければできないんです。
忙しさに追われた管理職は、どうしても視野が狭くなり、マネジメントよりもタスク処理に走ります。
すると、部下との対話が減り、関係性が薄くなり、信頼が育たず、結果として離職が増える。
まさに、負のスパイラルです。
採用活動を強化する前に、今いる管理職が“どんな表情で仕事をしているか”を見てみてください。
疲れきった顔をしていたら、まずやるべきは“採用”ではなく、“再生”です。
未来をつくるのは、余白と対話がある職場
管理職が壊れていくのを放置していては、どんなに良い人材を採っても、定着しません。
むしろ、その優秀な人材から辞めていきます。
「辞める理由がわからない」
そう感じたときは、職場の空気を感じてみてください。
上司たちに、対話の余白はあるか?
仕事に“意味”や“やりがい”を持って接しているか?
部下と目線を合わせられているか?
それができていないなら、変えるべきは求人票ではなく、職場の温度です。
人が辞めるのは、待遇だけじゃありません。
「ついていきたい上司がいない」
それが、いちばんの離職理由なのかもしれません。
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