「副業=悪」では時代遅れ?社員の幸せと業績を両立させる視点とは
「あのさ、うちの社員が副業したいって言ってるんだけど、どう思う?」
ある中小企業の社長さんから、こんな相談を受けた。
今や、副業が特別なことではなくなってきた時代。でも、経営者の立場からすると、複雑な気持ちになるのも正直なところだろう。
本業に集中しなくなるんじゃないか?
情報漏洩とかリスクが怖い…。
副業を認めたら、逆に辞めるきっかけになるんじゃないか?
そんな“もやっと感”を抱えている社長さん、多いんじゃないだろうか。
けれど、ちょっと発想を変えてみると、「副業=悪」という図式そのものが、今の時代には合わなくなってきているのかもしれない。
今日は、副業が社員と会社、両方にどう影響するのか?そして、社員の幸せと会社の業績を同時に伸ばすにはどんな視点が必要なのか?について、考えていきたい。
固定観念がブレーキになっていないか?
まず聞きたいのは、「副業って悪いことだと思ってますか?」ということ。
この問い、実はすごく根深い。
特に昭和~平成の時代を駆け抜けてきた経営者の方々にとっては、「仕事は一つに集中するべき」「会社に人生を捧げるのが当たり前」という価値観がベースにある。
でも、令和の働き手たちは、ちょっと違う空気を吸って生きている。
彼らは「副業=もう一つの挑戦」であり、「自分の人生を取り戻す選択肢」として見ていることが多い。
単にお金が欲しいからではなく、「学びたい」「社会とつながりたい」「自分の可能性を試したい」
そんな前向きなモチベーションが副業の背中を押している。
逆に言えば、「副業禁止」や「副業NGな空気」があることで、やる気や信頼感にブレーキがかかるケースも少なくない。
会社にとって本当に損しているのは、副業そのものじゃなくて、
副業を許容できない文化や、不信感の芽かもしれない。
実際、副業が会社にどんな影響をもたらすのか?
「でも本当に、副業を認めたら本業がおろそかになるんじゃないの?」
そう思う気持ちは分かる。
でも、これは本当に“ケースバイケース”だ。
実際に、ある中堅のIT企業では、副業解禁後に社員満足度が大幅にアップした。
それだけじゃない。新しい知見を副業から持ち帰り、プロジェクトの生産性が向上したというデータまである。
また、別の例では、ある製造業のベテラン社員が、地域の農業支援NPOに副業として関わり始めた。
そこで身につけたコミュニケーション力と巻き込み力を活かし、社内の若手育成にも貢献。
副業が“人間的な幅”を広げた結果、組織にプラスの風を吹き込んだのだ。
もちろん、全てがうまくいくわけじゃない。
でも、副業を通じて社員が「人生のオーナーシップ」を取り戻すと、不思議と“本業”にも責任感が生まれてくる。
まるで、サブの仕事で腕を磨いた職人が、より本業でもキレのある仕事を見せるような感覚だ。
会社は社員の“全人生”にどこまで関われるのか?
ここで少し視点を変えてみたい。
そもそも、会社って「社員の何を守る場所」だろう?
給料?雇用?キャリア?
いや、それだけじゃない。
社員一人ひとりの「人生の充実」や「家族の幸せ」にまで貢献できたら、それってすごいことじゃないか?
副業を通じて、「この会社は、自分の人生を応援してくれている」と社員が感じられる。
それって、ただの制度じゃなくて、文化なんだ。
たとえば、社員が「副業でセミナー講師をしてみたい」と言ってきたとする。
あなたならどうするだろうか?
A:就業規則を確認して「NG」と伝える
B:応援する前提で、労務や情報の管理について一緒に設計を考える
このAとBの差は、目先のリスク対応か、長期的な信頼関係構築かの違いだ。
社長が「人」を信じることで、人は「会社」を信じるようになる。
そうやって“文化”はできていく。
幸せな社員がいる会社は、やっぱり強い
副業を認めるか否かは、最終的には経営判断だ。
でも、今の時代においては、「働き方の多様性」を受け入れる企業が選ばれていくのは間違いない。
なぜなら、若手人材は「何をするか」以上に「どんな会社か」で会社を選ぶから。
そして何より、「社員が幸せそうに働いている会社」って、やっぱり魅力的なのだ。
売上や業績はもちろん大切。
でも、その土台には「信頼」と「共感」という見えない資産がある。
副業というテーマをきっかけに、社員と会社の信頼のかたちを見直すことができたら、
それは経営にとって、かなり大きな一歩になるはずだ。
最後に問いかけたいこと
あなたの会社にとって、社員とは何者ですか?
ただの労働力?
それとも、未来を一緒につくる仲間?
副業という選択肢に対して、どう向き合うか。
それは、経営者としての“人間観”そのものが問われているのかもしれません。
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