「退職代行」は最後通告。社員に見切られる社長の共通点
ある日、突然、社員が出勤してこなくなる。
連絡もつかない。電話もスルー。
仕方なく実家に電話をかけたら、「本人から会社に連絡してくれるなって言われてます」って、親御さんが言う。
そんな時代になったのか…と唖然としたその数日後、会社に一通のメールが届く。
差出人は、退職代行サービス。
社員の名前とともに、「このたび、●●様は御社を退職する旨の意思表示を代理人を通じて行います」って、ビジネスライクな文面。
そこには、彼が直接何も言ってこなかった理由なんて、一言も書かれてない。
あれ?自分、見切られた?
退職代行って聞くと、多くの社長が最初に感じるのは「最近の若い奴らは…」っていう違和感かもしれません。
たしかに、直接言わずに辞めるってどうなのよ?って思いますよね。筋を通せ、とか。顔を合わせて言うべきだ、とか。
でも、ちょっとだけ想像してみてください。
なんでその社員は、退職という人生の節目を、他人に任せてまで“自分の口で言えなかった”のか。
それって、ただ面倒だったとか、度胸がないとか、そういうレベルの話じゃないんですよ。
実は退職代行って、社員にとっては“最後通告”なんです。
もうあなたとは関わりたくない。
直接話すのも、顔を合わせるのも嫌だ。
むしろ、あなたに“拒絶されること自体が怖い”んです。
「辞める」と言えない空気、ありませんか?
退職代行を使われる会社には、共通する“空気”があります。
それは一言で言うと、社員が言いたいことを言えない空気。
たとえば、
- 普段は「何かあったら言ってこいよ」と言ってるけど、言ってきたら否定される。
- 社長はフレンドリーなつもりでも、社員からは“近寄りがたい”と感じられている。
- そもそも、意見を出したり、弱音を吐いた社員が、陰で「甘いよな〜」と噂される環境。
こんな状況だと、退職を申し出るのは、社員にとってまさに“ハードモード”。
それなら、数万円払ってでも「全部代わりにやってくれる人に任せたい」という心理になるのは、当然かもしれません。
実際の話:辞めた社員の“沈黙”
僕が関わったある中小企業での話。
その会社は10名ほどの少数精鋭で、社長も「ウチはアットホームな職場だ」と自負していました。
でもある日、入社2年目の社員が、突然出社しなくなった。
最初は「体調崩したのかな?」と思ってたら、2日後に退職代行から連絡が来たんです。
社長は驚きました。「彼とはうまくやってるつもりだった」「むしろ最近、業績も上がって喜んでたのに」と。
だけど、周囲の社員からは意外な声が出てきたんです。
「あの人、ミスを相談すると“そんなこともわからないの?”って言われてたみたいです」
「たぶん、辞めたいって言ったら怒られるって思ってたと思います」
「あの社長の“期待してるぞ”ってプレッシャー、しんどいって言ってたなぁ…」
この社長、実はまったく悪気がなかったんです。
むしろ“期待してたからこそ”厳しく接していた。
でも、社員はその期待を「拒否できない圧力」と感じていた。
そして、結果的に、“何も言わずに離れる”という選択をとった。
あなたの声は、届いていますか?
経営者って、意外と「伝えてるつもり」で「伝わってない」ことが多いんですよね。
たとえば「うちは風通しのいい会社だ!」って言ってても、社員の本音はこうです。
- 「言っても変わらないから言わない」
- 「どうせ否定されるから黙っておこう」
- 「なんか言ったら“察しろ”って雰囲気になるし…」
これ、付き合ってる相手に「何でも言って」って言いつつ、いざ言われると不機嫌になる人と同じです(笑)
社員は敏感です。空気を読んで、顔色を見て、「言っていいこと・悪いこと」を無意識に選別してます。
その結果が、「退職代行」という選択肢なんです。
辞める=悪じゃない。でも、言えないのは問題
社員が辞めること自体は、悪いことじゃありません。
価値観が違えば、方向性がズレれば、それぞれの道を行けばいい。
でも、「直接言えないほど、関係性が壊れている」っていうのは、経営的にもダメージが大きい。
だって、それって“組織としての信頼関係が機能してない”ってことですから。
採用にお金をかけても、教育しても、辞める時に“音信不通”になって終わるような関係性なら、全部ムダです。
今すぐできる「辞めやすい会社」への3つの工夫
「辞めやすい会社ってどうなの?」と思うかもしれませんが、逆なんです。
辞めやすい=相談しやすい=風通しがいい=結果、辞めにくくなるんです。
なので、まずは以下の3つを意識してみてください。
① 感情を受け止める練習をする
辞めたい理由は十人十色。でもその理由を「正当」かどうかで判断しない。
「そう思ったんだね」「それはしんどかったね」って受け止める練習を。
② 社長の“圧”を数値化してみる
たとえば、社員に「最近、話しかけやすさ10点満点で何点?」って匿名でアンケートをとる。
自分の印象と、相手の印象のギャップを見える化するだけで、めちゃくちゃ気づきが増えます。
③ 離職者に聞く
実際に辞めた人に、「ぶっちゃけ、辞めるときどう感じてた?」って聞いてみてください。
痛いけど、それが一番のヒントになります。
最後に:退職代行は経営の通信簿
退職代行って、単なる“若者の甘え”じゃありません。
むしろ、これは「あなたの会社、言いたいことも言えない空気になってませんか?」っていう通知表なんです。
見切られた、じゃなくて、「気づかせてもらった」って捉えられるかどうか。
そこで社長として一段上に行けるかが、組織の未来を変える分岐点だと思います。
退職代行を使われない会社にするために、
退職代行を“きっかけ”に成長できる会社にするために。
まずは、あなた自身の「伝わっているか?」を見直すことから、始めてみませんか?
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