他社と戦わずに人を採る方法―“ストーリーで惹きつける”採用戦略
「もう、どこも人が採れないって言ってるよね。」
最近、そんな嘆きをあちこちの中小企業の社長さんから聞くようになりました。
求人を出しても反応はイマイチ。Indeed、ハローワーク、求人媒体…どこに出しても、似たような文章。
結局、大手や条件の良い会社に流れていってしまう。こっちは年収も福利厚生も限界ギリギリ。もう勝負にならない。
でも、実は。
「条件で勝負しなくても、応募者の心をグッと掴む方法」があるんです。
それが今回のテーマ、“ストーリー採用”というアプローチです。
どんな求人が心に残るか、思い出してみてほしい
ちょっと想像してみてください。
あなたがもし、今どこかに転職しようとしているとしたら。
求人票にどんなことが書かれていたら、ちょっと「気になるな…」と思うでしょう?
給料?年間休日?もちろん、それも大事。
でも、それ以上に目を引くのって――その会社の「空気感」とか「人の想い」じゃないですか?
例えば、
- 「この社長の想い、なんか好きだな」
- 「この人たちと働いたら面白そう」
- 「大変そうだけど、この仕事、意味ありそう」
こういう気持ちって、数字だけじゃ絶対に伝わらない。
むしろ、求人票の“その裏側”にあるストーリーに、人は惹かれるんです。
差別化したいなら、数字じゃなく“人間味”で勝負しよう
中小企業が採用で苦戦するのって、ある意味「当たり前」なんです。
なぜなら、条件で勝負すると最初から勝ち目がないから。
求人広告って、いわば「条件合戦」。
給料が高い、休みが多い、福利厚生が手厚い。
この土俵で戦おうとすると、大手企業や資本力のある会社に勝つのは至難の業。
でも、人ってそんなに単純じゃない。
「ちょっと給料は低いけど、なんかこの会社、気になる」
「大企業じゃないけど、ここで働いてみたい」
――そんな風に思わせる“余白”があるのが、中小企業の強みでもあるんです。
その武器こそが、「ストーリー」です。
応募が5倍になった「物語求人」の実話
僕が実際にコンサルしたある製造業の会社。
場所は地方。社員数12名。30年以上続く町工場。
正直に言うと、条件は…よくはない(笑)。
給料もボーナスも、大手に比べれば見劣りする。年休も少ない。社屋も古い。
最初、求人原稿を見たときの感想はこう。
「うーん…これだと、どこにでもある会社に見えますね…」
そこで提案したのが、「社長の想い」を前面に出したストーリー型の求人。
どうしたかというと――
求人票の冒頭に、社長の過去のエピソードを入れたんです。
「自分の父親が作ったこの工場を、なんとか未来に残したいと思っています。」
「機械は古い。でも技術は負けてない。
若い人にバトンを渡すためにも、今、仲間を本気で探しています。」
たったこれだけ。
でも、この一文が、応募者の心を動かしたんです。
実際に応募してきた20代の方は、面接の場でこう言っていました。
「なんか、文章を読んだときに“人”が見えたんですよね」
この求人、Indeed掲載後の応募数は以前の5倍。
しかも、ただの「数」じゃなくて、「ちゃんと社長の想いに共感して来た人」が集まりました。
結果、入社した方はいま、会社の未来を担う中心メンバーとして働いています。
人は「条件」で動かない。「共感」で動く。
“条件で動く人”は、条件が良いところへすぐに流れていきます。
でも、“共感で動いた人”は、多少の大変さやギャップがあっても「意味があるから」と頑張れる。
これ、採用だけじゃなくて「恋愛」にも似てると思いません?
単に見た目や年収で好きになった相手よりも、
苦労話や価値観に触れて、「この人を応援したい」と思って始まった関係の方が、長続きする。
求人も一緒です。
「条件」で採る時代は、もう限界に来ています。
これからは、「想い」や「物語」で選ばれる会社が生き残るんです。
ストーリー採用の“作り方”は、じつはカンタン
「ストーリーなんて、うちにあるのかな?」
そう思った方もいるかもしれません。でも大丈夫。
ストーリーって、特別なことじゃなくて、あなたのこれまでの「積み重ね」そのものです。
例えば、こんな切り口から考えてみてください👇
- なぜこの会社をつくったのか?
- どんな想いで仕事をしているのか?
- 辛かったけど乗り越えた出来事は?
- どんな人と一緒に働きたいと思ってる?
- 社員と交わした忘れられない一言は?
これらを箇条書きで書き出すだけでも、十分な“物語”になります。
それを求人票の冒頭にちょっと差し込むだけで、「中身のある会社」に変わるんです。
応募が来るかどうかは、スペックじゃなく“体温”だ
結局、人は「情報」よりも「感情」で動く生き物です。
スペックの羅列だけの求人票では、心は動きません。
ストーリー採用は、言い換えれば“会社の人間らしさ”を伝える採用戦略です。
すごい実績やキラキラしたキャッチコピーなんて、いりません。
あなたの言葉で、あなたの想いを届けるだけでいい。
そうすれば、他社と戦わずに、自然と「ウチで働きたい」と言ってくれる人が集まるようになります。
最後にひとつ、あなたに聞きたいこと
あなたが今、誰かを採用したいと思っている理由ってなんですか?
ただ人手が欲しいから?それとも、会社の未来を一緒につくってくれる仲間が欲しいから?
もし後者なら、その想いこそがストーリーのはじまりです。
求人票は、単なる“人を集める紙”じゃない。
あなたと未来の仲間をつなぐ“ラブレター”みたいなもの。
さあ、条件だけじゃ伝えきれない、あなたの物語を綴っていきましょう。
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