入社のワクワクは3ヶ月で消える。“その後”の仕掛けはありますか?
最初の火が消えたとき、会社の“本性”が見られている
「御社の理念に感動しました!」「この会社で成長したいです!」
採用面接や入社式では、希望に満ちた言葉が飛び交いますよね。
実際、初任給アップや福利厚生の見直し、SNSでのブランディング強化など、「採用強化」のために手を打っている中小企業も増えています。社長自身が動画に出て会社の想いを語る企業だって、今や珍しくありません。
でも――。
そのワクワク、どれくらい持続してますか?
リアルな話をすると、多くの新入社員の熱は“3ヶ月”で落ち着き始めます。
理由は明快で、「会社の本当の姿」が見えてくるからです。
採用ページではキラキラしていたけど、実際に働いてみたら「上司と合わない」「成長実感がない」「社内コミュニケーションが微妙」など、現場のリアルが浮き彫りになってくるのがこのタイミング。
つまり、入社後の3ヶ月って、会社にとっては“最初の信頼テスト”なんです。
ここで「やっぱり違った」と思われてしまうと、モチベーションは一気にしぼみ、転職サイトをこっそり開く社員が出てきます。
キラキラ採用が裏目に出る、よくあるパターン
「よし!初任給を上げて、オシャレなオフィス作って、カフェスペースもつけた!」
「採用動画で若手にインタビューして、SNSも充実させて…これで完璧!」
…と思ったら、半年後に「やめます」と言われる。
このパターン、実はすごく多いんです。
なぜでしょうか?
理由の一つは、企業側が“入社の入り口”に力を注ぎすぎて、入った後の“関係の継続”にまで手が回っていないから。
たとえるなら、見た目はおしゃれで料理も美味しいレストラン。でも、店員の態度が悪い、トイレが汚い、オーナーが話を聞いてくれない…だったら、リピートしたくなくなりますよね?
それと同じです。
どんなに入り口を魅力的にしても、現場に温度差があったら、人は離れていきます。
むしろ、入り口をキラキラさせるほど、ギャップにがっかりされやすくなる。これが、今の採用市場の難しさでもあります。
働き続けたい理由は、日常の中にある
では、「働き続けたい」と思ってもらうには、何が必要なんでしょうか?
結論からいえば、それは“納得感”です。
・この会社で働く意味が、自分の中にある
・評価やフィードバックがちゃんと伝わってくる
・失敗しても応援してくれる土壌がある
・社長や上司の背中に、「本気」を感じられる
こういう、小さな“納得ポイント”の積み重ねこそが、長く働きたい理由になります。
たとえばある建設系の中小企業では、毎週1回、社長が社員の1人ひとりに「今、どんな気持ちで働いてる?」と聞く時間を設けているそうです。
たった5分の対話でも、「自分の声が届く会社なんだ」と思えた若手が増え、離職率が目に見えて下がったんだとか。
別の事例では、30代の女性社員が「この会社で頑張ろうと思ったのは、産休・育休の制度そのものよりも、上司が“本気で戻ってきてほしい”って言ってくれた一言だった」と話していました。
制度や仕組みも大事ですが、「自分はここで認められている」と実感できる瞬間が、何よりも定着を支えるんです。
じゃあ、どんな“仕掛け”ができるのか?
「よし、じゃあうちもなにかやらなきゃ」と思った方へ。
大事なのは、派手な制度じゃありません。
まずは“すでにいる社員との信頼づくり”を丁寧にやること。そこができていないのに、「新しい人をどう入れるか」にだけ目を向けると、関係の土台が崩れてしまいます。
じゃあ具体的にどんなことができるのか?
例えばこんなアクションから始められます。
・定期的な1on1ミーティングを「雑談込み」でやる
・新入社員に社内メンターをつけて、既存社員との橋渡し役にする
・「最近どう?」と声をかけるだけの“見回りタイム”を設ける
・社長自らが週に1度だけ“雑談の窓口”を開く(SlackでもOK)
どれも、今すぐにできそうなことばかりですよね。
それなのに、実際にはやっていない会社が多い。
なぜなら、「そこに時間を使うことの意味」がまだ浸透していないからです。
でも、考えてみてください。
どんなマーケティング施策よりも、どんな求人広告よりも、社内にいる“社員の声”こそが、未来の採用力を左右します。
採用とは、「入口づくり」だけじゃない
採用って、入口の工夫だけだと思われがちです。
でも、本当の意味での採用力って、「人が辞めない仕組み」があるかどうかなんです。
人は、ワクワクする理由で会社に入ります。
でも、長く働きたいと思うのは、別の理由。
それは、日常の中にある安心感。
自分の努力がちゃんと見られているという感覚。
誰かがちゃんと気にかけてくれているという信頼。
これらは、ちょっとした行動でしか生まれません。
大げさな制度やマニュアルより、むしろ“人としてのやりとり”の積み重ねが大事なんです。
今日からできる一歩
この記事を読んでくれたあなたに、1つだけ提案があります。
「あなたの会社で、3ヶ月後もワクワクしている社員がいるか?」
この問いに、胸を張って「いるよ」と言えるように、何か一つ“その後の仕掛け”をつくってみてください。
それは、週1回の対話かもしれないし、Slackでの「ありがとう報告」かもしれない。
どんな小さな一歩でもいい。それが積み重なっていくことで、会社は「辞めたくない場所」になっていきます。
入社のワクワクは、たしかに3ヶ月で消えるかもしれない。
でも、その後に“続けたい理由”を育てていくのは、経営者であるあなたの在り方にかかっているのです。
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