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私の小さな、秘密の反抗

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あやか
目次
「せっかくのお菓子」と私の密かな抵抗 「思い出の品」の、目立たない居場所

K子さんの前では、私は完璧な「いい嫁」を演じている。笑顔で相槌を打ち、感謝を口にし、言いたいことは全部、心の奥にしまい込む。 K子さんとの関係を円満に保つための、いわば「従順な私」という仮面だ。

でも、この仮面をかぶり続けると、私は私でなくなってしまうような気がする。だから、私は密かに、K子さんには決して見せない、小さな「反抗」を始めた。それは、私の心を壊さないための、大切な自己防衛だ。

「せっかくのお菓子」と私の密かな抵抗

K子さんが来るたびに、彼女は決まって手土産を持ってくる。「これは、あなたたちが好きだと思って」「私がわざわざ選んであげたのよ」そう言って渡されるのは、高級だけれど、私の好みではないお菓子。

K子さんがいる間は、私は笑顔で「ありがとうございます!」と言い、そのお菓子を夫と一緒に一口食べる。 K子さんは「美味しいでしょ?」と満足げだ。もちろん、心の中では「正直、そんなに…」と思っているけれど、そんなことは言えるはずもない。

K子さんが帰った後、私はそのお菓子を、そっと戸棚の奥にしまう。そして、夫に「ねぇ、正直これ、あんまり好きじゃないんだよね」と囁く。夫は苦笑いしながら、「だと思った」と返す。そして、私たちは二人で、冷蔵庫から自分たちが本当に好きなコンビニスイーツを取り出して食べる。 K子さんには絶対に知られない、この瞬間が、私にとって、甘い小さな反抗だ。 K子さんの「親切」に、私は完全に屈したわけじゃない。そう自分に言い聞かせている。

「思い出の品」の、目立たない居場所

K子さんは、昔から義実家にある、少し古風な花瓶を「あやかちゃん、これ、いつか使ってね」と持ってきたことがある。 K子さんの思い出の品であることはわかる。でも、それは私の部屋のテイストとは全く合わない。

K子さんがいる時は、私はその花瓶をリビングの棚の真ん中に飾り、いかにも大切にしているように見せた。でも、K子さんが帰った後、私はその花瓶を、リビングの隅にある、あまり目立たない場所にそっと移動させる。決して捨てるわけではない。 K子さんの思いも尊重しつつ、でも、私の大切な空間を、私の手で守る。この小さな行動が、私にとって、自分の居場所を主張する、静かな戦いなのだ。

これらの小さな反抗は、誰にも言えない、私だけの秘密だ。 K子さんにはもちろん、夫にすら、これが私の心の均衡を保つための行為だとは話せない。なぜなら、彼にとっては、私が「ただ反抗しているだけ」に見えるかもしれないから。

私は今日も、K子さんから受け取った「善意」を、自分のペースとやり方で受け入れる方法を模索している。完璧な「いい嫁」を演じながら、自分自身を失わないために。この小さな反抗が、私の心を守る最後の砦なのだ。

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優しい声が、私には向けられない
あやか
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